リバースイノベーション

リバースイノベーション

【リバースイノベーション】とはご存知でしょうか?

新興国で生まれた技術革新(イノベーション)や、新興国市場向けに開発した製品、経営のアイデアなどを先進国に導入して世界に普及させるという概念。先進国の技術や商品を新興国へ移転するという従来手法とは逆に、新興国から先進国へ逆流reverseさせるので、リバース・イノベーションとよばれる *日本大百科全書(ニッポニカ)参照

 

このリバースイノベーションを最近身近に感じる出来事がありました。

私は大学卒業後アメリカ、カリフォルニアに留学をしました。貧乏学生だったのですぐにアルバイトをして生活費を稼がなくてはなりませんでした。そこで、友人の紹介で日本食レストランで働かせてもらうことになりました。仕事はキッチン担当です。モンゴル人と一緒にチキンを焼いたり、メキシコ人と一緒に板場で巻き寿司を作ったりしました。その時にカリフォルニアロールの巻き方を教えてもらいました。本場カリフォルニアでのカリフォルニアロールです。ご存知のように巻き寿司は日本が発祥国です。江戸中期の1750年代に生まれ一般化したようです。その後、約200年の歳月が経て1970年代にアメリカ西海岸を中心に寿司が一大ブームとなり、その中でカリフォルニアロールが生まれたようです。カリフォルニアロールはアメリカで大人気の巻き寿司となり、その結果、日本にも逆輸入されました。これも1つのリバースイノベーションですね!

ところで、このカリフォルニアロールですが、フィリピンでも大人気のメニューです。フィリピンの場合、中身はアボカド、カニカマ、キュウリ、そしてマンゴーが入ります。手軽に作れてみんなから喜ばれるのでホームパーティに呼ばれると、いつもこのカリフォルニアロールを作っていきます。

(オフィスでのバースデーパーティー)

こんな感じでカリフォルニアロールをよく作っているのですっかり私の定番料理となりました。しかし、手軽で簡単に作れるカリフォルニアロールですが、1つだけ難点があります。それは、持ち運びが難しいことです。巻き寿司を作って、切って、きれいに盛り付けても、その状態のまま持ち運ぶのが難しい。しかも、フィリピン人は炭水化物が大好きで、たくさん食べます。大量の巻き寿司を手軽に、そして、できればきれいに盛り付けられた状態で持ち運ぶにはどうしたら良いかが課題でした。

そんなある日、フィリピン人の同僚がポットラックパーティの時に、カリフォルニアロールをデリバリーで注文して持ってきました。中身を見て私は驚愕しました。

大量のカリフォルニアロールがびっしりと詰まていて、それでいて美しく盛り付けられており、しかも持ち運びしやすい、とすべてを兼ね備えていました。アメリカで生まれたカリフォルニアロールが、新興国のフィリピンでさらに〝イノベーション〟されていました。

フィリピンでは配車アプリを使ったフードデリバリーサービスが、ここ数年ですっかり定着しました。パーティー好きのフィリピン人にとって、持ち運びのしやすいくイノベーションされたカリフォルニアロールは今後さらに人気が出てくるのではと感じています。私も早速真似して作ってみました。

アメリカ式の巻き寿司と比べてみてください。

1~2人で食べるならアメリカ式の量でも十分ですが、フィリピンのパーティーは誘っていない近所の人たちもどんどん参加するような人数が読めないパーティースタイルです。従って料理をたくさん用意する以外に方法がありません(笑)

一方、今後は日本もダイバシティや地域コミュニティの再形成がテーマになっていきますので、フィリピン式のカリフォルニアロールが『リバースイノベーション』されて、日本に逆輸入されるかもしれませんね。

前置きが長くなりましたが、私はこの『リバースイノベーション』が日本の介護業界にも起こるなと感じています。2020年の今年から外国人介護士がぞくぞくと日本にやってきます。フィリピン、ベトナム、インドネシア、ネパール、カンボジア、バングラディッシュ、パキスタン、などなどアジア諸国を中心にその輪が広がってきています。もちろん、介護は日本が最大の先進国でありますが、今後はこのようなダイバシティ溢れる外国人介護士の方々によって、間違いなく日本の介護のカタチは変わっていくでしょう。私はポジティブに変わっていくと思っています。その理由の一つには、日本にはなくて、諸外国には当たり前のように存在しているものが、介護と強く結びついていて、その存在が日本の介護を昇華してくれるだろうと考えているからです。それは何か、ずばり、『宗教観』です。

歳を重ね、老後のステージを迎えると、人は徐々に『死』のことを考えるようになります。〝死んだらどうなってしまうのか〟と。その時に、何か絶対的なものに対する信仰心があるかどうかで、『死』に対する捉え方が変わってくるのではないでしょうか。フィリピンであればキリスト教、インドネシアであればイスラム教、ネパールであればヒンドゥー教と、それぞれがそれぞれの生死観を持っています。しかし、日本にはその考えが失われてきてしまいました。そこに、日本の高齢化問題の根本的な原因が隠されているのではないでしょうか。

〝介護と宗教観〟という日本にとっては新しい概念を、新興国から逆輸入することで、日本の介護は1つステージが上がっていくのではないでしょうか。